理由は、すでにある
ブランドを「つくる」という言い方に、ずっと違和感がありました。ゼロから発明しないという立場について。
ブランディングの依頼を受けたとき、最初にやることは「考えること」ではありません。集めることです。
創業の経緯。うまくいかなかった時期に何を捨てなかったか。長く付き合っている取引先が、なぜ他社に移らないのか。現場のベテランが新人に必ず言う一言。クレームになりかけた案件を、どう処理したか。
こういうものを、ひたすら机の上に出していきます。
「らしさ」は発明できない
ブランディングというと、コンセプトを新しく考えることだと思われがちです。会議室でホワイトボードに向かって、キーワードを出して、束ねて、きれいなステートメントにする。
でも、そうやって生まれた言葉は、たいてい定着しません。
理由は単純で、社内の誰も、その言葉に心当たりがないからです。心当たりのない言葉は、繰り返されません。繰り返されない言葉は、理由になりません。
逆に、社長が20年言い続けてきたけれど一度も文章になっていない言い回しを見つけて、それを磨いて出すと、驚くほど早く定着します。全員がすでに知っているからです。
足りないのは素材ではなく、組み替え方
集めた素材を眺めていると、たいていの会社には、選ばれる理由がすでに存在していることが分かります。
問題は、それが散らばっていることです。
- 営業資料には書いてあるが、Webサイトには載っていない
- 社長は言っているが、現場は知らない
- 顧客は評価しているが、会社は自覚していない
- 昔は言っていたが、いつのまにか言わなくなった
だから、新しく足す必要はありません。並べ替えるだけで、意味が通ることが多い。
同じ要素でも、順番を変えれば別の理由になります。「技術力が高い」を先に置くと技術の会社に見えるし、「一度引き受けた仕事を途中で降りたことがない」を先に置くと、まったく違う会社に見える。どちらも事実です。どちらを理由にするかが、ブランディングの判断です。
だから、色を持ち込まない
この立場を取ると、支援する側に1つの制約が生まれます。
自分たちの作風を持ち込めない、ということです。
制作会社にはたいてい得意な作風があります。それ自体は悪いことではありません。ただ、作風を持ち込めば、どの会社も同じ顔になります。素材から組み上げたのではなく、テンプレートに流し込んだ結果だからです。
私たちが何色にも染まらないと言っているのは、美学の話ではなく、方法の必然です。素材から組み上げると決めた以上、こちらの色は邪魔にしかなりません。
remix という社名は、そういう意味で選びました。