一貫性とは、トンマナを揃えることではない
ガイドラインを作っても社内に浸透しないのはなぜか。一貫性の定義をひとつ動かすと、やるべきことが変わります。
「一貫性を持たせましょう」と言うと、たいていフォントと色の話になります。
ロゴの使用ルール。余白の最小値。使ってよい色、使ってはいけない色。いわゆるトンマナのガイドライン。もちろん必要です。ただ、それだけを整えても、ブランドは立ち上がりません。
理由は、ガイドラインが禁止事項の集まりになりがちだからです。
禁止事項は、判断を生まない
「ロゴを引き伸ばさないでください」は守れます。守るのが簡単だからです。
でも現場が本当に困るのは、そこではありません。
- この案件を受けるべきか、断るべきか
- この価格で出していいのか
- この取材依頼に、誰が答えるべきか
- お客様からのこの要望を、どこまで聞くべきか
ガイドラインは、こういう問いに何も答えてくれません。だから結局、その場その場で判断することになり、判断はばらつきます。
見た目だけ揃っていて、言っていることがばらばらな会社ができあがる。
一貫性とは、理由の反復
私たちは一貫性をこう定義しています。
一貫性とは、あらゆる接点で同じ「選ばれる理由」が確認できる状態。
広告では「A」が理由なのに、サイトでは「B」、SNSでは「C」、営業が話すと「D」、実際にサービスを受けたら「E」。これでは、いくら色とフォントが揃っていてもブランドにはなりません。顧客の中に何も溜まらないからです。
逆に、
- 発信を見ても
- 商品を見ても
- デザインを見ても
- 話してみても
- サービスを受けても
「やっぱり、この会社は◯◯なんだな」となる。これが一貫性です。
反復して、はじめて理由になる
一度言っただけの言葉は、まだ理由ではありません。
顧客の中で理由として機能するには、違う場面で、違う形で、同じことが繰り返される必要があります。記事で読んだことを、営業の場でも聞く。営業で聞いたことが、実際のサービスでも起きる。その積み重ねが「だからこの会社なんだ」に変わっていく。
だから一貫性は、デザインの問題ではなく運用の問題です。
そしてここが、ガイドラインを配って終わりにしてはいけない理由でもあります。配るべきなのは禁止事項ではなく、判断基準です。
「うちは、こういう理由で選ばれている。だから迷ったら、その理由が強くなる方を選ぶ」
これが社内で共有されていれば、細かい指示がなくても判断はそろいます。私たちが最後の工程を「定着」と呼んでいるのは、ここまでやらないと意味がないからです。